AGC(旭硝子)が、グリーン水素の製造に使用される素材の工場建設計画を凍結したことが報じられた。
同社は水電解装置に用いるフッ素系イオン交換膜の主要メーカーとして知られており、グリーン水素の普及を見据えた生産能力の拡大を進めてきた。しかし、今回の凍結判断により、当面は既存設備での供給体制が維持される見通しとなる。
背景には、世界的なグリーン水素市場の立ち上がりが当初の想定よりも緩やかであることが指摘されている。各国政府は脱炭素政策の一環として水素戦略を掲げているものの、実際のプロジェクトでは資金調達の難航やインフラ整備の遅れが課題となっており、需要の本格化には時間を要するとの見方が広がっている。
グリーン水素は再生可能エネルギーを用いた水の電気分解によって製造され、製造過程で二酸化炭素を排出しないことから、鉄鋼・化学・運輸など幅広い産業の脱炭素化に不可欠とされる。一方で、製造コストが依然として化石燃料由来の水素を大きく上回っており、経済性の確保が普及の鍵を握る。
素材メーカーによる設備投資の凍結は、グリーン水素のサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性がある。今後の市場動向や各国の政策支援の行方が注目される。