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ケニアの乗り合いバス「マタツ」――音楽と色彩で若者文化を映す移動空間
ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)で日常的に利用されている乗り合いバス「マタツ」(matatu)は、単なる交通手段にとどまらない存在として知られている。個人経営の小型バスであるマタツは、車体が鮮やかに塗装・装飾され、街を走る「動く芸術作品」とも呼ばれてきた。
乗客が乗り込むと、まず耳に飛び込んでくるのは大音量の音楽である。車内には高度な音響システムが備え付けられており、移動しながら音楽を発信する「走る音楽スタジオ」のような役割を果たしている。
こうしたマタツは、若いナイロビの人々が「格好いい」と考える価値観を体現する存在とみられている。車体の色使いや装飾のデザイン、車内で流す音楽の選曲に至るまで、ドライバーやオーナーの個性が全面に表現されている点が特徴的である。色鮮やかな外観と迫力のある音楽によって、移動のための空間が文化的表現の場へと姿を変えている。
マタツの装飾文化は、世代を超えて受け継がれながらも、時代ごとの流行や音楽シーンの変化を柔軟に取り込んできた。近年では、SNSを通じて個性的なマタツの写真や動画が広く共有され、国外からも注目を集めるようになっている。
ナイロビの街を彩るマタツは、アフリカの都市文化における若者たちの創意工夫と自己表現を象徴する存在として、地元の人々のみならず訪問者の関心も引きつけ続けている。