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昨年11月に香港の公営住宅・王福苑(Wang Fuk Court)で発生した大規模火災の被災者が、かつての自宅から見えた海の景色を写真に収めるため、火災後初めて現場を訪れました。
住民のイアン・チューさんの自宅は、吐露港(Tolo Harbour)に面した眺望のよい場所にありました。この火災では王福苑の住宅ブロックのうち王昌樓(Wang Cheong House)の被害が特に深刻で、168人の住民のうち81人が犠牲になっています。
チューさんは荷物の整理のために現場へ足を運びましたが、同時に、改築工事などを経て失われてしまった海の景色を最後に記録に残すことも目的の一つでした。毎日のように眺めていた吐露港の水面や日差しは、もう同じかたちでは戻らないとみられています。
かつての暮らしの一部だった風景を写真に収める行為は、日常との静かな別れを告げるものといえます。火災からの復興が進むなかで、被災者の方々は住まいの再建だけでなく、心の整理にも向き合い続けています。チューさんの行動は、大災害がもたらした深い喪失感と、それでも前を向こうとする姿勢を静かに伝えています。