BREAKING

インドネシア冒涜罪法、元副大統領への告発で政治利用の懸念が再燃

元記事公開:

インドネシア冒涜罪法、元副大統領への告発で政治利用の懸念が再燃

インドネシアの冒涜罪法が、改めて大きな論争を呼んでいる。同国の元副大統領ジュスフ・カラ(Jusuf Kalla)氏が、過去に行ったイスラム教とキリスト教の宗教紛争に関する発言をめぐり、冒涜罪で警察に告発されたことが明らかになった。

今回の事案で注目されるのは、その構図の異例さである。告発者はキリスト教の信仰者であり、告発された側は世界最大のイスラム教多数派国家において長年にわたり最高級の政治指導者を務めてきた人物だ。こうした構図は、冒涜罪法が本来想定していた「宗教的少数派の保護」という枠組みとは大きく異なるものといえる。

同法をめぐっては、以前から根本的な問題が繰り返し指摘されてきた。宗教の尊厳を守るという名目で制定された法律が、実際には政治的対立や個人間の紛争に利用される事例が後を絶たないという点である。2017年には当時のジャカルタ州知事バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)氏が冒涜罪で有罪となった事件が国際的にも大きく報じられ、法律の恣意的な運用に対する懸念が広がった経緯がある。

インドネシアは約2億7,000万の人口を擁し、イスラム教徒が多数を占める一方で、キリスト教やヒンドゥー教、仏教など多様な宗教が共存する国家でもある。宗教に関する議論は常に政治的な含意と深く結びついており、冒涜罪法の適用はその時々の政治状況に左右されやすいとの見方が根強い。

長年の政治キャリアを持つカラ氏のような要人に対する告発は、法律の公正かつ一貫した運用をいっそう困難にする可能性がある。同国の宗教的多元性と政治体制のはざまで、冒涜罪法のあり方をめぐる議論は今後さらに深まっていくものとみられる。